前回に引き続き、空調設備についてご説明して行きます。
<熱を運ぶ媒体による分類>
空気を暖めたり冷やしたりするために熱を運ぶ媒体として何を利用するのかによっても、空調システムは分類されます。
熱を運ぶ媒体には、主に水や空気、冷媒が使われ、この組み合わせにより4つの方式に分類されます。
・全空気方式
空気で熱を運ぶ方式です。
空調機により外気と室内からの還気を混合させ、その空気を加熱又は冷却しダクトで室内に送風します。
この方式は暖房と湿度の管理、新鮮空気の供給をダクトを通して行うため、
各室での微妙な調整には不向きで、一般にデパートや劇場などの大型の建築物に適しています。
「機器を集中して配置するためメンテナンスしやすい」
「換気量(室内の空気を清浄に保つために必要な空気量)を大きくすることができる」というメリットがあります。
その反面、機械室が大きくなる、天井内に大きなダクトスペースが必要といったデメリットを伴います。
・空気・水併用方式
水と空気の両方を併用し熱を運ぶ方式です。
空気の清浄度を保つために必要な外気の取入れは全空気方式と同様とし、
室内の温度調節は、温水又は冷水を室内に設置されたファンコイルユニット等の熱交換器へ取り込み行います。
水は空気に比べ少ない面積で多くの熱を運べるため、
全空気方式と比較して熱を搬送するためのスペースを小さくすることが可能です。
しかし、エアフィルタなどを分散配置するため保守に手間がかかったり
室内に水が通った管を設置するため水損事故のリスクがあります。
・全水方式
冷水及び温水といった水だけを利用し熱を運ぶ方式です。
空気を使用しないわけですから、大きなダクトスペースが要らないといったメリットがあります。
この方式は空気・水併用方式と異なり、
空気の清浄度を保つための外気の取入れに窓や全熱交換器の設置が必要となります。
・冷媒方式
熱輸送に冷媒配管を使用する、どなたにもなじみ深いエアコンが代表選手です。
小型の建物では最も多く採用されている方式ですね。
他の方式に比べると高機能、低価格化が進んでいて、省エネの面でも優れています。
昨今は機器性能の向上、建築計画上の工夫により、大規模な事務所ビルでも採用事例があります。
上記の他方式に比較し、成績係数(COP)が高く、最も省エネルギーを図れますが、
一方で、個別分散型になるため、温度制御対象が小区画になり、温度制御が容易で、快適性が増すものの、
維持管理対象が小型で多数分散し、個々の耐久性も中央式と比較し短いため、
長期的な修繕、更新コストは高くなる傾向にあります。